慎也さんは私のお店についても、凄く羽振りのいいお客様で居てくれた。
大丈夫だよ、と言っても何万円もするシャンパを。
いいよ!って言ってもボトルを開けるたびにくれる諭吉を。
『いいのかな……』
私は慎也さんに、家庭の事情しか話していない。
本当にこんなに尽くしてもらっていいのだろうか?
そんな疑問や不安が私を襲った。
でも慎也さんは、私のそんな不安を掻き消すように言った。
『僕は、学生の頃お金で苦労したんで貴方にも同じ目に遭わせたくないだけです。』
それは同情とも取れ、悲しくなった。
でも同時に、慎也さんは昔の自分と今の私を重ねて見ているんだと思った。
自分が苦労したからこそ、同じ苦労をして欲しくない……
その気持ちがわかった瞬間、すごく嬉しかった。
私は大学の勉強で分からないところを慎也さんに聞いたりしていたので、余計にそれが伝わったんだ思う。
なんだかその瞬間、私は慎也さんの事がとても愛おしく思えた。
好きだって気付くのは、まだ先の話のこと。

その日慎也さんは『チップ』として、私に計10万円を渡して帰った。
受け取った私は呆然としてて、ただ出会い系で新しいお客を掴もうとしてただけなのに……
いろんな人と連絡をとった。
陰部の写真を送られたり、下ネタ責めされたり、時給が発生していないのに面倒くさいやりとりまでした。
ただお客様の1組になればいい。
それだけだったのに……

3日後、慎也さんに誘われ私は再び銀座にいた。
高そうなご飯を目の前にして、私は慎也さんに
核心をつく質問をしようとした……
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